みんなで支え合える社会を目指して 〜多様な個性が響き合う鎌倉へ〜

支える人も、支えられる人も、自分らしくイキイキと暮らせる鎌倉へ

私の父は52歳で脳梗塞を発症し、右半身の麻痺と言語障害が残りました。 それ以来、69歳で生涯を終えるまで、リハビリと向き合う日々を送りました。しかし、最後の5年間は気力が尽き、介護が必要となりました。

父は病気になる前から祖母と二人暮らしでした。そのため、父の本格的な介護が必要になったとき、私は都内での生活やキャリアを諦め、実家に戻る決断をしました。その後、高齢だった祖母も介護が必要になり、私は3年間にわたり、父と祖母の二人を同時に介護する生活を送りました。

当初は、「家族だから自分が支えるのは当然」と思い込み、仕事と両立しながら懸命に介護に取り組んでいました。しかし、日々の介護に追われるうちに、心身の負担は徐々に積み重なり、次第にその重さに押しつぶされそうになりました。終わりの見えない介護生活は、暗闇の中にゆっくりと吸い込まれていくような感覚でした。限界が見え始め、何度も何度も心が折れそうになりました。

父と祖母は毎日のように、「ありがとう」と感謝の言葉をかけてくれました。それでも、心身ともに疲弊しきっていた私は、時には暴言を浴びせてしまったこともありました。 (二人が他界して数年経ちますが、今でもそのことを深く後悔し、思い出すたびに罪悪感に苛まれます。)

公的支援を頼ることで変わった生活

家族の使命感や覚悟だけではどうにもならず、いよいよ限界を迎えたとき、ようやく公的な介護支援を頼る決意をしました。介護福祉サービスのおかげで、追い詰められていた私の心と体は救われました。 訪問介護やショートステイといった支援を受けることで、日々の負担が大きく軽減されました。このサポートがなければ、私自身も健康を損なっていたかもしれません。 しかし、ケアマネージャーや介護士の皆さんのおかげで、家族との時間を穏やかに過ごせるようになり、関係が壊れることなく見送ることができました。

介護を「家族だけの責任」にしない社会へ

介護は、専門的な知識や技術を持つ福祉サービスやプロフェッショナルに任せるべきです。 すべてを家族が抱え込む必要はありません。家族を支える気持ちは大切ですが、自分の未来や夢を諦めることが、必ずしも最善の選択肢ではないはずです。公的支援や専門家の力を活用することで、介護する側も、される側も、より良い生活を送ることができる。 そうすれば、共に心身の健康を守りながら、穏やかな時間を共有することが可能になります。特に30代以下のヤングケアラーについては、決してひとりで抱え込むのではなく、地域や公的支援をもっと頼りやすい環境を作ることが重要です。

すべての人が自分らしく生きられる社会へ

ここまでは私の高齢介護の実体験をもとに書きましたが、これは決して高齢者介護だけの問題ではありません。
身体障がい、聴覚障がい、視覚障がい、知的障がい、精神障がいなど、事故や病気によって何らかの障がいを抱える方々、そしてその支援をする人々もまた、支えを必要としています。福祉に関わるすべての人が、自分らしく、いきいきと暮らせる社会を実現したい。 そして、「社会的弱者」という言葉が存在しない鎌倉を目指したい。私はそのために、これからも取り組んでいきます。

共に生きる社会へ 〜まずはお互いを知るところから〜

誰もが安心して暮らせるまちをつくるためには、物理的な環境整備だけでなく、心の豊かさを育む取り組みが不可欠です。共生・共助・共創」の理念を地域全体で共有し、それを具体的な施策として形にしていくことが大切です。
バリアフリーを必要とする人、地域の理解を求める人、公的支援を必要とする人――私たちは皆、同じ鎌倉で暮らしています。 まずは、知ることから。そして、お互いを思いやり、支え合えるまちへ。

私は、そんな優しさにあふれる鎌倉であり続けるために、まずは自分の得意分野から貢献しようと考えました。そこで、車いすバスケットボールやボッチャの普及活動のお手伝いを始めました。
現在、鎌倉市内の学校で車いすバスケットボールの体験会を開催できるよう準備を進めています。これは、神奈川県障がい者スポーツサポーター養成講座での実技セッションがきっかけでした。その際、湘南スポーツクラブの選手たちが車いすバスケの指導に来てくださり、私はそのプレーに心を奪われました。
車いすバスケットボールは、想像以上に難しく、自由自在に車いすを操りながらシュートを決める選手たちの姿は圧巻でした。そのプレーの裏には、計り知れない努力があることは容易に想像できました。
私はバスケットボールのプレイヤーだからこそ、事故や病気で身体にハンデがある人がここまでのレベルに到達することが、どれほど大変なことかすぐに分かりました。 しかし、実際に一緒にプレーすると、そこに「障がいの有無」といった枠組みは存在せず、ただバスケットを楽しむ仲間として通じ合う瞬間がありました。

「挑戦する姿」が生み出す力

障がいの有無にかかわらず、すべての人が自分の可能性に挑戦し、夢を追いかけることができる社会は、とても素晴らしいものです。 車いすバスケットボールをはじめ、さまざまなスポーツや活動に取り組む人たちは、日々努力を重ね、自分自身の限界を超えようとしています。 その姿は、見る人に勇気と感動を与え、「できない」という固定観念を打ち破る力を持っています。
しかし、現実には、障がいのある人と健常者が互いに理解し合う機会は、まだ十分にあるとは言えません。
ですが、共にスポーツを楽しみ、同じ目標に向かって協力することで、私たちは違いを超えて深くつながることができると信じています。
私は、こうした実際のふれあいを通じて、単に「助ける・支える」という一方通行の関係ではなく、お互いに学び合い、高め合う関係が生まれることを実感しました。

共に歩み、支え合う社会へ

多様性を認め合う社会は、一人ひとりの理解と行動から始まります。 障がいのある人たちが挑戦する姿を知り、共に活動することで、新しい価値観が生まれ、互いの可能性を広げることができます。
お互いが少しずつ歩み寄ることで、誰もが生きやすい、支え合う社会を築いていけるのではないでしょうか。

障がいのある方と企業がつながる場の必要性

日本には「障害者雇用促進法」があり、一定規模以上の企業には障がい者の雇用義務が課されています。しかし、雇用を法的な義務として進めるだけでなく、企業と障がいのある方がより良い形でつながる場を創ることが、持続可能な共生社会の実現には不可欠です。

障がいのある方が自分の能力を発揮し、やりがいを持って働くためには、企業側の理解や環境整備が必要です。一方で、企業にとっても、多様な人材を活かすことで新しい発想や価値を生み出し、社会的責任(CSR)を果たす機会となります。しかし、現状では障がいのある方の働き方や得意な分野を、企業が十分に理解できていないことが、雇用のハードルになっています。

そこで、企業と障がいのある方が直接交流し、相互理解を深める場が必要です。

就労支援イベントやインターンシップの拡充
企業は具体的な業務の適性を知ることができ、障がいのある方も自分に合った働き方を見つけることができる。

スポーツや文化活動を通じた交流の機会
職場以外の場でお互いを知る機会を増やし、より自然な形でつながることができる。

障がい者雇用を「義務」として捉えるのではなく、企業と働く人双方の可能性を広げるチャンスと考えることが重要です。
私は、車いすバスケットボールの体験会などを通じて、新しい出会いの場を創り、企業と障がいのある方がつながる機会を増やしていきます。

多様な個性が響き合う、共生のまちづくりを行うための具体的な提案


1. 誰もがアクセス可能なインフラ整備

バリアフリーの徹底
公共交通機関、建物、道路、遊び場など、すべての施設でバリアフリー設計を標準化

ユニバーサルデザインの推進
高齢者、障がいのある方、子ども連れの家族が快適に利用できる空間や設備を整備

地域交通の充実
移動が困難な人を支援するコミュニティバスやデマンド型交通サービスの導入


2. 福祉サービスの充実

地域包括ケアシステムの構築
高齢者や障がい者が住み慣れた地域で医療・介護を受けられる仕組みを整備

障がい者就労支援施設の拡大
働きたい人が自分の能力に応じた仕事を選べる機会を提供

障害福祉の強化
障害福祉や発達支援サービスの拡充


3. 教育とコミュニティ活動の支援

インクルーシブ教育の推進
障がいのある子どもと健常の子どもがともに学べる環境を整備し、相互理解を促進

地域交流イベントの定期開催
世代や背景を超えた交流を促すフェスティバルやワークショップを実施


4. 生活の安心を提供

経済的支援策の充実
低所得家庭への生活費や学費の補助、障がい者手当の拡充

防災対策の強化
高齢者や障がい者に配慮した防災計画と訓練の実施


5. 心の豊かさを育む取り組み

文化・芸術活動の推進
すべての人が参加できる音楽・美術・演劇のワークショップやイベントを支援

自然との共生を大切にした空間づくり
公園や自然保護区を整備し、地域住民が心身をリフレッシュできる場を提供

相談支援の充実
すべての世代・障がいの有無を問わず、心の悩みを相談できる窓口を開設


6. 地域全体での支え合い

共助を育む仕組みづくり
ボランティア活動の支援や、住民が気軽に助け合えるアプリやITを活用した仕組みを提供

子どもと高齢者の交流促進
高齢者施設や地域センターでの世代間交流プログラムの実施

地域住民の意見を反映する仕組み
定期的な住民アンケートやワークショップを開催し、多様な意見を政策に反映


7. 出会いの場の創出

障がい者と健常者の相互理解を深める機会の提
車いすバスケットボールやボッチャなど、その他パラスポーツの体験会の開催

障がい者と企業の交流促進
障がい者と企業のマッチングの場を提供し、雇用機会を創出

ボランティアの機会の創出
神奈川県などの障がい者支援団体と連携し、障がい者スポーツのボランティアに興味のある人向けの交流会やセミナーを開催