共助の第一歩は顔と顔を合わせること
私は鎌倉小町まちづくりラボという市民団体の代表をしております。
当団体は、お祭りやお神輿などの地域の伝統行事、地元商店会のお手伝い、震災時を想定した炊き出し訓練など安心・安全で持続可能なまちづくりのお手伝いをする団体です。
私たちは先日、小町の鎮守である蛭子神社にて【神社de炊き出し】という炊き出しを中心とした防災訓練を実施しました。これは、今年1月に発生した能登半島の震災や日本各地で起きている大雨災害の被害状況を受け、これは決して対岸の火事ではなく、鎌倉にもこの様な災害はいつか必ず来ると思ったことが背景にあります。
そして、そう言った状況に陥った際に最も重要なのは『共助』の力だと、私たちは考えました。
有事の際、「公助」つまり行政の支援が届くまでの間、最初に頼りになるのは私たち地域住民同士の助け合いです。
しかし、いざというときに円滑に共助を発揮するためには、日頃の準備と訓練が欠かせません。
私たちは、「共助」の第一歩は、地域に住む方、働く方が顔を合わせてコミュニケーションをとることから始まると考え、この炊き出しの企画を考案しました。
温かい豚汁を食べながら、お互いに顔を合わせ会話を重ねることで関係性を構築し、地域全体の共助の力を育んでいきたいと考えています。
災害はいつ、どこで起こるかは予測できません。だからこそ、いざという時に備えて、地域全体で防災の意識を高めることが重要です。
鎌倉にはたくさんの個性あふれる地域があり、それぞれ形も特色も違いますので、各地域ごとの共助の力、防災の形を作る必要があります。
例えば、防災や減災に関係する活動以外でも地域の人たちが集まって、顔を合わせる機会として、自治会・町内会の集まり、お祭り、清掃活動など地域の皆さんが参加し顔と顔を合わせることで自然と共助の力が育まれていきます。
小町地域にも蛭子(ひるこ)神社という神社があり、例年、鎌倉駅前や小町通を神輿が練り歩き盛大に例大祭が行われていましたが、コロナ禍が原因で4年間開催することができませんでした。コロナ禍だけでなく、高齢化や小町商店会の縮小など例大祭を運営する人が足りないことが原因で、2024年も開催が危ぶまれていました。
そんな中、私は地域住民の皆さんと共に小町まちづくりラボという団体を作り、例大祭の運営に参加していただける町内の方達を集めることを始めました。
具体的には、月に一度の神社の清掃活動を始め、蛭子神社に関係する方、蛭子神社のことが好きな方、どなたでも参加してもらえる形で開催しましたが、自治会・町内会、商店会、地元消防団など多くの方たちが参加してくれるようになり、5年ぶりの例大祭を開催し、小町のまちを神輿が威勢の良い掛け声と共に練り歩くことができました。
このことがきっかけで、今まで繋がっていなかった地域の人たちが顔を合わせ、交流が生まれました。
神社で行った炊き出しもこの例大祭がきっかけで始まったと言えます。このように地域の方達が顔を合わせる機会が少しづつ増えていくことで、その地域の防災力が育まれます。
そして、このような活動が各地域ごとに行われるようになれば、それは鎌倉全体の共助による防災力が高まっていくことになります。
防災と言っても、海側、山側でそれぞれ形が違いますし、人口の構成も違います。また地形も違えば、避難所の数も違いますので、それぞれの地域ごとの防災の形を作っていくことが重要で、その支援こそ行政の仕事だとも考えています。
行政のすべき役割の最上位は防災と福祉です。もちろん行政だけに頼るのではなく、防災に取り組んでいる市民団体や専門家が鎌倉には多く存在します。
私は、行政、地域、市民団体が一つとなって、鎌倉の防災に取り組んでいく姿を目指し、活動して参ります。
安心・安全な防災のまち鎌倉を創るための具体的な提案
鎌倉市は海や山に囲まれた地形のため、地震・津波・土砂災害などのリスクが非常に高い地域です。
観光地としても多くの人が訪れるため、住民だけでなく観光客を含めた防災対策が求められます。
1. 津波・高潮対策の強化
・海岸沿いの津波避難タワーの増設や避難経路の整備
・避難誘導標識の多言語化(観光客対応)
・津波シミュレーションを活用したリスク分析と情報発信
2. 土砂災害への備え
・ハザードマップの更新と住民への周知徹底
・斜面地の崩落防止工事や排水設備の点検強化
・土砂災害警戒区域に住む人への早期避難支援体制の整備
3. 地域防災力の向上
・市民団体や自主防災組織との連携強化
・防災訓練の定期実施(観光地や学校との協力も含む)
・高齢者や障がい者の避難支援計画の見直し
4. 観光客向けの防災対策
・主要観光地(鶴岡八幡宮・小町通り・江の島電鉄沿線など)における緊急避難所の整備
・スマホアプリやデジタルサイネージを活用したリアルタイム防災情報の発信
・旅行業者・宿泊施設と連携した避難マニュアルの策定
5. 災害時の情報発信力の向上
・SNSや防災アプリを活用した迅速な情報提供
・外国人向けの多言語防災情報の充実(英語・中国語・韓国語など)
・FMラジオ・防災無線の有効活用
6. 災害に強いインフラ整備
・老朽化した避難施設やライフラインの耐震補強
・災害時に孤立しやすい地域のアクセス道路の強化
・防災備蓄の拡充(特に観光客が多い時期の備蓄計画を見直し)
鎌倉は歴史的な街並みや自然環境を守りながら防災対策を進める必要があります。住民・観光客・行政が協力し、災害に強いまちづくりを進めることが大切です。
また、私が行っている具体的な取り組みとして、鎌倉小町商店会の小町通りの防災事情についてご説明します。小町通りは皆さんのご存じの通り、鎌倉観光の中心で毎日1万人以上の人々が往来する通りです。
しかしながら、小町通りには震災などが起きた際の避難経路を示した地図や防災についての取り組みがありませんでした。
2022年10月29日に韓国ソウルの繁華街、梨泰院で起きた痛ましい事故では、群衆雪崩により159人の方が亡くなりました。私は、このまま何も対策を講じなければ小町通りでも同様の大惨事が起きてしまうと考え、学生防災団体のGenkaiさんに協力を仰ぎ、現在、両者で小町通りの防災について取り組みを始めました。小町通りは、観光地であり、住民よりも観光客が多い場所です。震災が起きた際、どこに逃げるのか?誰が誘導するのか?津波は来るのか?
このように地域に即した防災の形を考えることは、災害から住民の命と生活を守るために必要不可欠です。鎌倉は、地域ごとに地形、人口構成、インフラ状況、災害のリスクが異なるため、一律の防災対策では対応しきれない課題が生じると考えられます。たとえば、沿岸部では津波対策、谷では土砂災害対策が重要であり、鎌倉駅周辺では地震時の観光客の避難所の確保が課題となります。
また、高齢化率の高い地域では、要介護者や移動が困難な住民に特化した避難計画が求められる一方、若い世代が多い地域では、防災教育や災害時の役割分担を重視する必要があります。さらに、インバウンド観光客が多く集まる地域では、外国人向けの多言語対応や文化に配慮した防災支援が不可欠です。
地域特有のリスクと住民のニーズに合わせた防災計画を策定し、住民参加型の防災訓練や情報共有を通じて、防災意識と行動力を高めることが重要です。これにより、地域全体で災害に強い基盤を築くことができます。
私は、行政、自治会、市民団体、消防団などが協力し、それぞれの地域で、具体的な防災の形を考え、日頃からの準備や訓練を行える鎌倉市を創りたいと考えています。
